不携帯

 携帯電話をできるだけ携帯しないようにした。

 平日は仕事で使うので会社には持っていかざるをえないが、休日はひとりで外出するときは基本的に自宅に置いておくことにしようと決めたのが土曜日のきのうで、実際にやってみたら、とりあえずは特に困ることはなかった。時間がわからないのは腕時計をすればいいし、スマホ決済はクレジットカード(デビットカード)を使えばいいし、移動中に音楽を聴けないのも心穏やかになる感じがしてそれはそれで悪くなかった。しいて言うなら、写真が撮れないことくらいだったが、代わりにカメラを持ち歩いてもいいかもしれない。

 電車でもバスでも飲食店でも、仕事中でも移動中でも食事中でも読書中でも、スマホは容赦なくこちらの集中力を殺いでくる。スマホのせいだけではないのだろうけれど、ここ数年間、どんどん本を読めなくなってきて、集中力を欠くだけじゃなく無闇にイライラしたり攻撃的になったりするときもあったのでこれはいかんと思い、心療内科に通って医師の勧めに従い薬を飲んでみたらその間はどうやら改善していたようだったけれど、ようで、というのは自分ではあまりその実感がなく、そもそも心の状態を判断するのもまた心なのだから、その心が正常な状態でなければ正常な判断もできないだろう、と思うからだ。

 今は季節的にやや躊躇われるのだけれど、チェアリングというのをやってみたいと思っている。チェアリングというのはWikipediaによると、

 

チェアリングとは、持ち運び用に軽量化された椅子を野外に設置し、そこに腰かけて主に飲酒などをしながら過ごす行為を指す造語。

 

というアクティビティ(?)なのだけれど、僕の場合は飲酒をしたいのではなくて、本を読んだり、パソコンで文章を書いたり、ぼーっとしたりしたいと思っている。もちろんスマホを家に置いて。

 椅子は、チェアリングの提唱者によると安価な椅子でも構わないそうなのだが、わりと形から入るタイプの人間としてはそれなりのものが欲しいと思ってネットで調べていたら、ヘリノックスというメーカーの「サンセットチェア」というのが良さそうだったので、何度か店舗へ下見に行ったものの、まだ購入には至っていない。

 

 午後、遅い時間に五反田のブックファーストへ行った。スケジュール帳を物色してみたもののあまりピンと来るものがなく、良さそうなものはいくつかあったけれどどれも日曜日始まりで、月曜日始まりにこだわりがあったので、結局買わなかった。本は一冊だけ、いしわたり淳治『言葉にできない想いは本当にあるのか』を買った。本棚の前で一瞬、もしかしたらメルカリで安く売ってるかも……と思ったのだが、スマホを持っていなかった。