ひまり

 記憶にある限り、僕が子供の頃は「ひまり」という名前の女性は大人も子供も含めて一人もいなかった。

「ひだまり」や「ひまわり」を想起させる、しかしいずれとも似て非なるその名前は、世の中に登場したばかりの頃でこそ、いわゆる「キラキラネーム」としてテレビやネットで嘲笑の対象になっていたように思うのだが、近年は女の子の名前ランキングにおいてほぼ毎年のように上位に食い込んでいて、2020年はいよいよランキング1位の栄冠に輝いたらしい。

 漢字で書くと「陽葵」とか「陽茉莉」とか、きっと他にもいろいろな当て字があるのだろうが、「ひまり」が一体どこからやってきたのかそのルーツを検索していると、昭和初期から現在に至る女の子の名前ランキングの推移がヒットして、それによると驚いたことに昭和20年代後半から昭和50年代前半に至るまでの約四半世紀の間、「和子」がほぼ毎年のように1位か、少なくともトップ3にランクインしているのだった。

 

 通勤中、行きは藤井風、帰りはポスト・パンクのプレイリストをApple Musicで聴いていた。

 

 会社の入っているビルの別の階で新型コロナウイルスの感染者が出たらしく、夕方から管理会社がエレベーターや共用部の消毒作業を行う、というメールが総務から全社員へ一斉に送信されたのだが、消毒作業を行っているところを見た社員は誰もいなかったようだった。