泣かない40歳

30代が終わった。30歳の誕生日を迎えたときは感慨深いものがあって、その理由の大部分は右往左往しながら迷走してきてほとんど何もできなかった空虚な20代のせいなのだろうけれど、30年という月日が突然、ひどく重たいものに感じられて、晩ごはんを食べながら泣きそうになってしまったのを、今でも覚えているのだけれど、40歳ともなるとそれに輪をかけて過去が重く感じられて、これまで生きてきた日々を足枷のように引きずりながら生きていくのだな、と思うとともに、まさか自分が40歳になるとは、という驚きのような気持ちも入り混じった、ある種の清々しさが湧き上がってきた。身体が衰えたり病気を患ったりすること、端的に言えば死ぬことが、これからますます身近なことになっていくのだろうという予感とともに、人は生きている限り年を取るのだという当たり前のことをいよいよ実感するようになってきているのだけれど、思い返してみれば、30代はそんなに悪くなかった。少なくとも、20代のときよりはずっと楽しいことが多かった。今の気分も決して悪くない。